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33分探偵 インタビュー1

堂本剛・福田雄一

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鞍馬六郎役 堂本剛①

Q 最初に台本を読んだ時の感想は?
一言で言うと、おもしろいなと思いました。

Q 六郎はどのような人物ですか?
基本的にはいい人で、気付けば周りに人が集まってくる不思議な魅力を持った人です。

Q 堂本さんが感じる六郎の魅力とは?
発想や発言、物事のチョイスなどが変わってる…というか、かなりズレてるんですけど(笑)、本人は至って真面目なんです。事件に対しても真面目に取り組んでいて、その真面目さは魅力だと思います。

Q 事件に真面目に取り組んでいる…?
もちろんです。ただし普通の探偵とちょっと違うのが、事件を解決することではなく"33分もたせること"に一生懸命であることですが。

Q "ちょっと"ではなく大きな違いですね(笑)。
決めゼリフが「この事件、33分もたせてみせる!」ですからね(笑)。視聴者の方にはドラマの本編尺が33分であることって特に気にすることじゃないのに、それを前面に出してますから。その時点でもうよくわからないですよね(笑)。

Q 六郎をどのように演じようと?
あくまでも真面目にしっかり演じていきたいと思います。そもそも特殊な話なので、やり過ぎてしまうとドラマではなくコントに見えてしまう。それではドラマとしてやる意味がなくなってしまうので、その違いははっきり出したいと思います。

Q 苦労されていることは?
僕自身、人を笑わせることやお笑いが大好きということもあってこの雰囲気にのってしまいたくなる時があるんですが、この作品において僕はそうあってはいけないポジションなので気をつけてます。芝居の加減が非常に難しく、その場その場で監督と話し合いながらやってます。

Q この作品における六郎の役割とは?
六郎は簡単な事件を引っ掻き回すと同時に、それを誰よりも冷静に受け止めている人。散らかしたり、片付けたりといろいろな役割があるので、芝居も様々なバリエーションを用意しておかなきゃとは思ってます。

Q 実際に演じてみて、六郎のイメージは変わりましたか?
もともと共演者の方のアプローチを見て臨機応変にいこうと思っていたので、特にイメージが変わったということはありませんね。自ら動くことはなく、風が吹けば揺れ、雨が降れば流されるような水面に浮かぶ葉っぱのような感覚で挑みたいなと思っていたんです。

Q12:受動的でありたいと。
物語がそういう展開なんです。誰もが犯人がわかっている状況でも「果たしてそうでしょうか?」って言い出すのは六郎なのに、みんなが捜査に走り回ってる中、本人はバレーボールをしてたりする。最初に仕掛けるだけ仕掛けといて、あとは流れに任せる自由人なんです(笑)。

Q 六郎のビジュアル面でのこだわりはありますか?
そもそもつかみどころのない役でイメージがわきにくかったんですが、監督の要望でスーツスタイルになりました。髪はそれに合わせて切ってみました。夏で暑いからという理由もあるんですが(笑)。ただ、髪は六郎なら多少寝ぐせがついててもいいかな、なんて思ってます。探偵っぽく見えますかね(笑)?あと、メガネも話数ごとに変わってたりしますよ。

Q いろんな意味で独特な探偵ですね(笑)。
子供っぽくもあり、おっさんっぽいという路線を狙ってるんです。話すスピード、言葉のチョイス、髪型とスーツの変なミクスチャーなど、全体的に"子供おっさん"な感じを出したいなと。

Q ほか、六郎を演じるうえでのこだわりはありますか?
こだわりというわけではありませんが、六郎は笑顔が少ないですね。

Q 笑わない役?
基本的には。真剣に推理しているので、険しい顔が多いです。笑顔を見せることがあるとすればインサート部分で、食事したりバレーボールをしたりしている時ですね。

Q この状況で"笑わない"のは大変そうですね。
なにせ彼には"33分もたせる"という重大な使命がありますから、簡単な事件をいかに複雑に考えるかに忙しく、自然に険しい顔になりそうです(笑)。

Q 一方、現場は笑顔が絶えないようですが。
撮影スケジュールがかなりハードで、撮影に入って数日でスタッフもキャストも睡眠時間がなくフラフラなんですが(笑)、それでも常に笑い声だけはしてますね。

 

Q 水川あさみさん、高橋克実さんと共演のご感想は?
楽しいです。撮影の合間には"こより"を作って鼻に入れて、誰が最初にくしゃみをするか対決もするくらい仲良しです(笑)。

Q 作品のキーワードとして"ユルい"がありますが、これについてはどうとらえてますか?
確かにユルいですね(笑)。とても重要なことをスルーしたり、今やれよっていうところを後回しにしてみたり、いろんなことをかわしてばかりなんです。しかも六郎だけじゃなく、登場人物全員が(笑)。事件を目の前に、見事なまでに緊迫感がないんですよ。

Q その筆頭が六郎?
レベル的にはみんな一緒です。言いだすのは六郎でも、みんなそれにのっかってきますから。基本的にユルい…、いや、大らかなんですね(笑)。ただ、先ほどもいいましたが、みんなユルくはあるけど大真面目なんですよ。

Q やはり"真面目"は重要ポイントなんですね。
一見するとスタイリッシュだけど蓋を開けてみたらユルい、そのギャップを楽しんでいただきたいなと。なので、僕もクールかつ紳士的にバカをやっていこうと思います。劇中の音楽も、作品の内容に反してエッジの効いたかっこいい曲になってます。

Q みんなが六郎の奇想天外な推理にのっかるのは何故だと思いますか?
いつも引っ掻き回すけど、たま~にそれで真犯人にたどりつくことがあるんですよ。そこに信頼関係が築かれてるのかなって。回によってはかなり推理ドラマらしくなることもありますよ。

Q "回によって"ということは、普段は何ドラマ?
えっと…、サスペンス…ですかね? いや、ん~"脱力系サスペンス"というのはいかがでしょう?僕はこの作品をコメディとは言いたくないんですよ。最初からコメディだと思ってしまうと見え方が変わってくるし、ちょっと違うのかなって。まぁ、"脱力系サスペンス"ってのも、まったく意味がわからないですけど(笑)。

 

Q 斬新なドラマになりそうです…。
本当にふり幅のある作品で、最後にはどえらいことになる可能性も秘めているなと感じてます。…と、これくらい言っておいた方がいいかな(笑)。

Q こういう作品に挑むのは役者として、どんな気分ですか?
変な気負いはありませんね。俳優として必要とされている現場で、僕なりにできることを精一杯演技する。それだけです。

Q 福田監督はどのような人ですか?
普段は非常にユルい人です(笑)。現場では監督として締めるところはしっかり締めてやってらっしゃいますが、かなり笑いをこらえながら指示を出してますね。

Q 現場ではよく福田監督の笑い声が聞こえます。
それでも多少はこらえてるはずなんですけどね(笑)。作品が作品なだけに、制作サイドが楽しく盛り上がってやりすぎないように注意しなくちゃとは思ってるんですが、一番危ないのは監督かもしれません(笑)。

Q 一般的な探偵ものは、最後に探偵が事件を解決することで視聴者はスッキリした気分になりますが、この作品はどんな気分になると思われますか?
一応、犯人はわかるのでスッキリはすると思いますよ…多分。ただ、最初から犯人がわかってる場合がほとんどなので、"スッキリ"の部分を六郎に求めない方がいいと思います。

Q 作品を通して視聴者の方に伝えたいことは?
そんな大それた作品ではないんで(笑)。純粋にバカをやっている大人の姿を見ながらクスクスと笑っていただければいいなと思ってます。気を抜いてたら見逃してしまうような細かいボケもたくさんありますし、"見てるとなんとなく楽しい"くらいに思っているうちに、それがクセになるような感覚になればいいですね。

Q "新しい堂本剛"が見られそうですね!
新しいかどうかはわかりませんが、不思議キャラにはなるでしょうね。現場ではモニターチェックがなくて、監督の「OK」の声がすべて。自分がどう映っているのかがわからないので不安もありますが、いろんな意味で冒険だという感じがしてます。楽しい航海に出ている気分です。

Q もし自分に困ったことが起こったら六郎に依頼します?
間違いなく自分で解決しますね。六郎の行動は8割が無駄なことで費やされているので、依頼する側としては若干迷惑で(笑)。六郎に何か依頼するのは老後の楽しみとしてとっておこうと思います。

Q ズバリ、六郎は名探偵ですか?
残念ながら、名探偵ではないですね…。ただ頭はいいと思います。犯人がわかりきってる状況の中でまったく違う仮説を瞬時にいくつも出せるのは頭がいい以外にありえない。その頭のよさが違う方向に出てる残念な人ですね(笑)。

鞍馬六郎役 堂本剛②

Q おかえりなさい!
あ、はい。ありがとうございます…。

Q かなり早い復活となりましたね。
そうですね。でも復活といっても1クール(3ヶ月)やるわけでもなく、次のドラマが始まるまでの4週間ということで、フジテレビさんにもいろいろ事情があるようです(笑)。おかげで撮影もスピーディーに進んでます。

Q 再び六郎を演じることを聞いて、まずどう思いましたか?
最初に話を聞いた時は、前シリーズで睡眠時間や食事時間を削って撮影をしていた悪夢が頭をよぎりました。今回も撮影時期が高橋さんや戸次さんの舞台の公演と重なっていることもあって、六郎を演じることよりも、みなさんの体力的な心配が先にありましたね。

Q すでに撮影に入っていますが、体力的にはいかがですか?
前回は5時間かけて撮っていたシーンが2時間で終わったりと、とても順調に進んでいます。チームワークができていることや話数が少ないこともありますが、前シリーズにこのスピーディーさがあれば良かったのに…と、よくみんなで話してます(笑)。

Q 「33分探偵」は堂本さんにとってどのような作品でしたか?
一言で表現するのは難しいけれど、そうですね…、最終的には"アリ"なんじゃないかと。そんな感じでしょうか(笑)。

 

Q 最終的にはということは、最初は"ナシ"だった(笑)?
ナシというより、僕自身にとってもテレビドラマ史にとっても、これまでにないことばかりだったので戸惑いが多かったんです。そもそも"テレビ局の要望で、解決できる事件を時間いっぱいに伸ばすことを堂々と口に出す探偵"という設定からして、ありえないですから。前半は、演じるのもかなり手探り状態だったと思います。

Q 演じながら戸惑いは払拭することができましたか?
そうですね。現場は戸惑いを感じるひまがないくらい笑いが溢れてましたから。簡単に言うと「くだらないから」なんですけどね(笑)。

Q 見る側も、演じる側も楽しめる作品なんですね。
大げさな表現じゃなく、本当に笑いをこらえるのは大変なんですよ。今日の撮影でもこらえきれず何度か笑ってしまいました。キャストもスタッフなど、大人がすごく忙しい思いをして撮ってるのがコレだと思うとなんてバカバカしいんだって思うじゃないですか(笑)。でも、こういうことが幸せなのかもしれないと思わせてくれる作品なんです。これからもっと年を重ねて振り返った時に、今よりもっとおもしろくなるんだろうなと感じさせてくれる作品であり、現場ですね。

Q 振り返る間もないくらい、年を重ねてもフジテレビの要望で六郎を演じてる可能性もありますよね?
僕が60代になっても六郎をやってるのは、ちょっと理想かもしれません。60歳を過ぎても今とまったく同じことをやってる六郎って、いい意味での見苦しさも加わって相当おもしろいと思うんですよね。もっと年を重ねてからも演じたい役です。

Q 「帰ってくるのか!?33分探偵」では小学生の六郎も登場しました。
直接の絡みはなかったんですが、(六郎を演じた)前田旺志郎くんが現場を見学に来てくれました。差し入れのドーナツを6個食べてましたね(笑)。

Q どんな話をされたんですか?
"ギロン"を教えたんですが、練習しながら難しいな~ってつぶやいてました。後半は見学に飽きたのか、衣装さんから借りた扇子を上に投げてドアのさっし部分にひっかける遊びを一生懸命にやってましたよ。

Q 一緒に遊ばれたとか?
"部屋にある扉がどれだけ開くか遊び"をやりました。いろんな扉をみつけては「ここは"開く部屋"やな」って言ってたので「そうやな」って答えてみました(笑)。その時に旺志郎くんならおもしろい作品ができるだろうと確信しましたね。

Q 六郎を演じるということで何かアドバイスはされましたか?
遊びに夢中でアドバイスを聞こうという姿勢はなかったですね(笑)。ただ勘も鋭いし、いい感性を持っている子だなというのがわかったので、自由にやっても大丈夫だろうという安心はありました。

Q 最初に「帰ってこさせられた33分探偵」の台本を読んだ感想は?
決めゼリフだったり、移動手段だったり、いろいろなことがバージョンアップしていて、見ている方にすごく楽しんでもらえそうだなと感じました。台本を読んだ瞬間からおもしろくなりそうだという手応えを感じて、クランクインが待ち遠しくなりましたね。

Q 一般的に続編ではキャラクターが成長していたりしますが、六郎は成長していますか?
それはちょっと…(笑)。ただ、僕自身が演じやすくなったという変化はありましたね。状況を読んで、ここでは(六郎が)前に出ないで控えていた方がいいなとか、ここは前にでるところだなとか。そういうバランスも含めて自然に演じられる感じがあります。

Q すんなり六郎に戻れたんですね。
はい。やればやるほど、それほどボケなくてもシレっとした感じで人を笑わすところまでいけそうだなと感じています。もっとも六郎はボケているわけではなくて、周りの要望に応えていく中で飛んでもないことを言ってるというポジション。あくまでもナビゲーターとして頑張っているだけなんですよ。それが、回を重ねるごとにシンプルにおもしろくなってきた気がします。

Q おもしろいなと感じたのはどんな時ですか?
「ここで!?」みたいなところでズームをかけたり、レールやクレーンを使った撮影をしてるんですよね。明らかに間違ってる無駄な動きが「33分探偵」らしくておもしろいですね。今回もカメラマンの方が撮りながらよく笑ってます。

Q 今回は沢村一樹さんが、刑事役として参加しますね。
まだ数日しか一緒にできてなくて…、といっても今回は撮影自体がすぐ終わってしまうので、あと数日しか一緒する機会がないんですけど(笑)。とてもクールな方という印象がありましたが、おもしろい方でした。前シリーズで、現場で水川さんが開発するどうしょうもないゲームを、僕は同じ関西人のよしみで仕方なく付き合ってあげてたんですけど、今回はとても残念なことに沢村さんもその餌食になってしまっていました。僕もその一端を担ってましたけど。意外に乗っかりやすいタイプの方だったようです(笑)。

Q 「33分探偵」の独特な世界観は戸惑うゲストの方も多いようですが、沢村さんは?
比較的すぐに馴染んでいらっしゃいましたね。頭が切れる方なんだと思います。演じるキャラクターもおもしろくて、「33分探偵」がまた次があるならばぜひいて欲しいキャラクターですね。

Q さらに、今回は舞台が京都・大阪という"関西編"があります。
基本的に六郎のやることは一緒なので、特に関西のノリを意識することはありません。しいて言えば、これまでちょいちょい出ていた六郎の関西弁が、周りの関西弁につられるように増えていることくらいです(笑)。

Q 関西編があるなら、今後は東北編とかもできそうですね。
そうですね。なまはげが登場したり、六郎がカニに乗って移動したりすれば成立するので、何でもできちゃいますね。それはこの作品のすごいところでもあります。なんだったら海外でもいい。撮影は国内でチープな背景を合成して、外国人のエキストラの方をたくさん歩かせて「これは海外だ」と言い張ればいいだけのことですから。そういう意味では今後も事件現場に困ることはないですね。最悪、壁に風景画を書いてもOKだと思います(笑)。

Q テレビドラマの常識が壊れそうです…。
いいでしょう、壊していきましょう。むしろ、壊すべきだとすら思います(笑)。

Q 今回も現場に笑いが溢れているようですが、印象的だったことは?
どれもこれも印象的であげきれないくらいですが、一番の収穫はチーフ助監督の存在ですね。彼はいつもでっかく "44"と書かれたキャップをかぶってくるんですよ。「33分探偵」なのに44ですからね。なんで11足してるんだって話じゃないですか。空気読もうよってツッコむと「ロケではこの帽子をかぶるのが僕のポリシーです」の一点張りで譲らないんです(笑)。さらに、ある日の撮影現場では監督が「本番!」って言ったら「うるさい!」と一喝して自分で「本番いきます。よーい、ハイ!」って言ってました。ついつい言っちゃったみたいなんですけど、みんな笑っちゃって本番にいけませんでした。さらには、業務連絡用のトランシーバーを使って、差し入れのドーナツを自分の分を確保しておけと言ってみたり、ドーナツが温かい部屋に置かれていることがどうも気になったみたいで「(ドーナツ)大丈夫なのか?」って変なところに気が回ったり、「ドーナツなら6個いける」というどうでもいい情報をみんなに知らせたりする、なかなか手強い人ですね。

Q それは、かなり手強いですね(笑)。
はい。僕らは敬意を込めて44分探偵と呼ばせていただいてます(笑)。

Q しかもドーナツ6個は、旺志郎くんと同じですね(笑)。
僕もドーナツは好きですけど、彼らには負けます。そんなに大好きなドーナツを旺志郎くんが次々と食べるのを見て44 分探偵は焦ってトランシーバーでキープを伝達した次第です。しかし、せっかくキープしたドーナツが温かい部屋にあったんでさらに心配しちゃったわけですね。まぁ、冷静に考えたらどうでもいい話なんですけど(笑)。

Q この現場らしいエピソードですね。
ほかにも、撮影中に沢村さんが前シーンでつけていた腕時計をしてなかったことに気付いて「つながりが…」って言ったら、水川さんがすかさず「あ、全然大丈夫です!」って。それでも沢村さんは心配してみんなに聞いてたけど、みんな口をそろえて「大丈夫です」と即答でした。沢村さんも「じゃあ…」と納得してましたが、普通につながりを無視できるのも、この作品ならではです(笑)。

Q 六郎が推理の間違いを指摘された時の表情"ギロン"がすっかり定着しましたが、今回新たな試みはありますか?
リカコのセリフの「マジョルカ?」はヒットでしたね。「マジで?」という意味で使われている言葉なんですが、水川さんの言い方がおもしろいんです。六郎的にはギロンに続き、"ニガリ"と"ピロン"いう表情が登場します。たくらみ顔というか、「もしかして…」という状況の時に目を細めて笑うような笑わないような微妙な表情をするんですがそれが"ニガリ"、ひらめいた時の表情が"ピロン"です。小さなお子さんとかがマネしてくれると嬉しいです(笑)。

Q 「なんやかんや」というセリフも浸透しましたよね。
もちろん今回も言います。あとは「痩せたカツオなら刺さるよね!」の別バージョンというか、さらに上をいくものが出ました。僕も台本を読んでビックリしましたから。撮影では、自分でも決まったなと満足の出来だったので11話を楽しみにしていてください。

 

Q 六郎と情報屋とのくだりにも変化が!
いろいろな芸人さんが出てくるので楽しみですね。もちろん小島さんも登場しますが、ポジションが…。詳しくは放送を見ていただくとして、僕は台本を読んで小島くんの胸中だけが心配でした(笑)。

Q 「帰ってこさせられた33分探偵」のみどころをお願いします。
基本的には前シリーズと変わらず楽しい作品になっていますが、起承転結がよりはっきりとして見やすくなっていますね。笑いどころも、細かく仕掛けつつもはっきりとわかりやすい部分も増えて、さらに小さな子から大人まで楽しめる作品になっていると思います。六郎の移動手段も前シリーズを上回るものも登場しますし、いろいろ楽しんでください!

Q 前回、自分に困ったことが起こったら六郎に依頼するかという質問で「しない」と答えてましたが、六郎がより身近になった今ならどうします?
残念ながら、そこに揺るぎはありません。いや、もちろん六郎はいい人なんですよ。いい人なんですけど…やっぱり信じきることがどうしてもできないんですよ、僕は(笑)。こんなに素直でまっすぐで正義感の強い青年はめずらしいんですけど、でも大事なことはやっぱり自分で考えます。

監督 福田雄一

Q 今さらですが、最初に『33分探偵』を思いついたきっかけを教えてください。
そこからですか(笑)。かなり前になりますが、30分ドラマと1時間ドラマに登場する有名な2人の刑事の名前を並べて「どちらが優秀か?」というなぞなぞがあったんです。答えは30分ドラマの刑事で、理由は30分でどんな事件も解決できるからなんですが、優秀さを時間で比べるという発想がおもしろいなと思ったんです。そこから、5分で解決できる事件をわざわざ引き延ばす探偵がいてもいいんじゃないかという発想につながりました。

Q それが「33分探偵」誕生の瞬間ですね。
最初の狙いでいうと、こんなにストイックに推理していくものではなくて時間が余ったからグルメリポートをしちゃうようなものをイメージしていました。今のように時間を持たせるためにおかしな推理を展開するという流れは、実際に台本を書き始めてから出来上がった形でした。

Q その形はどうして生まれたんですか?
元々の33分の放送尺を持たせるというコンセプトは大前提にありましたが、鞍馬六郎の人物イメージを膨らませているうちに、ふと、つかこうへい氏の「熱海殺人事件」が浮かんできた。あれは簡単に人を殺してしまった犯人に「犯罪たるやそんなもんじゃないだろ!」と、犯罪の美学みたいなものを警部が作り上げていく話ですが、そこに六郎を投影したらおもしろそうだなと。そこが鞍馬六郎の推理の根本原理になっています。

Q 六郎の推理の根本原理とは?
それがよくわかるのが、京都編での六郎のセリフ「鳥の足跡が、鳥の足跡であるわけがない!」です。鳥の足跡は誰がどう見たって鳥の足跡でしかないんですけど(笑)、六郎にしてみたら殺人事件に意味ありげにあるものがただの鳥の足跡なわけがないだろうと。あの一言が六郎の根本原理をすべて表していると思います。つまり六郎の頭の中には"人はこんな簡単な理由で人は殺さない"というのがあるんです。

Q あっさり犯行を自供する犯人が犯人のわけがないと(笑)。
そういうことです。だって、普通の推理ドラマでは犯人は自分の犯行がバレないように何らかのトリックでごまかそうとするじゃないですか。それなのに、このドラマの犯人だけやけに素直なのは変でしょ(笑)。

Q 容疑者が増えるということは、それだけトリックも必要になりますよね。
まず、トリックから考えます。だいたい1話につき2人の容疑者が出てくるので、2つのトリックが思いついたら、それが使えそうな展開を作って物語を完成させていきます。

Q 前シリーズも含めかなりの数のトリックが登場しましたが、考えるのは大変ですか?
どうも僕の頭には「33分探偵」回路があるみたいなんです。前シリーズの時は回路がつながってる状態からのスタートだったのでどんどんいろんなトリックが浮かんできてスムーズに書けてましたが、今回始まることになって久しぶりに書こうと思ったらなかなか浮かんでこない。これは特殊な回路なので、つながってないとうっかり成立しちゃうトリックばかり思いついちゃうんです。これならアリバイ的にも完璧だなと思いながら「あ、成立させちゃいけないんだった」って考え直したりして(笑)。ただ1回この回線が結びつくと、またいろんなトリックが浮かんでくるから不思議。苦労するのは最初だけです。

Q 推理にはかなり強引かつ破天荒なものが多いですが…。
トリックなのに成立させないことって意外に難しいんですよ(笑)。京都編での鉄道トリックは推理ものをやっている以上1度はやりたいと思っていたトリックですけど、これが考えると意外にうまく成立しちゃうんですね(笑)。それを成立させないために、あえて遅く出発させました。13話に登場するヤギを使ったトリックは、強引にみえるけど実はある小説で本当に使われていたことを誇張したもの。六郎は推理小説マニアなので、そこから得た知識をこの事件に当て込んでいるわけです。かなりオーバーにしているところが六郎なんですけど(笑)。

Q 六郎のセリフには推理小説のタイトルがたくさん出てきますが、福田さん自身が推理小説マニアなんですか?
好きなので結構読む方だと思いますが、マニアではないですね。本当のマニアだったらこんなトリックは許せないと思うので「33分探偵」は書けないです(笑)。

Q 「33分探偵」が福田さんのドラマ初監督作品になりますが、ドラマならではの楽しさはありましたか?
映画や舞台ってある意味"なんでもあり"という感じがありますが、ドラマはある程度の約束事や決まり事がある。サスペンスドラマにはサスペンスドラマの"定型"があって、それがあるがゆえに「こんなに崩しちゃってます」という遊び感が出せたのはテレビドラマでしか得られなかったことだと思います。そもそも六郎が事件を必死で持たせている33分というのは、ドラマの放送尺があるから。テレビだからこそ成立してる番組です(笑)。

Q 最近、楽しかったことを教えてください。
…………。楽しかったことですか………ないなぁ。「33分探偵」がクランクアップしたものの、仕事以外はしてないんですよ。僕は仕事毎に"これが終わったらやりたいことリスト"を作ってるんですが、「33分探偵」もまだ編集が残っているのでリストにあげたもの何1つ出来てないんです。あえてあげるなら、連日現場のロケ弁当が続いていたのが、クランクアップして枠に入ってない温かいご飯を食べられたことくらいです。楽しいことがあるとしたら、これから先だと思います。

Q 鞍馬六郎は、堂本剛さんをイメージして書かれたものですか?
先に企画ができてましたね。企画を読んだプロデューサーから堂本剛くんはどうかと言われた時の僕の第一声は「やってくれないでしょ!」でしたから。

Q そう思ったのはどうしてですか?
だって剛くんは昔"名探偵"でしたから。そのイメージをすべて崩すことになるから絶対に断られるだろうなと思ってました。ただ僕と剛くんは長い付き合いで、彼がやったら100%おもしろくなることがわかっていたのでダメ元で企画を話してみたんです。そしたら剛くんが大笑いしてくれた。そこからはぐいぐいと押していきました(笑)。

Q 収録に入って「さすが、堂本剛だ」と思わされたのはどんな部分ですか?
この作品では、僕と剛くんで約束があります。それは、劇中で絶対に笑わないこと。鞍馬六郎は大真面目に事件を推理しているのであって、別にいいがかりをつけているわけでも、ふざけているわけでもない。あくまでもフジテレビに「持たせてくれ」と言われているから事件を時間いっぱい引っ張っている、いわば被害者。被害者意識がありつつ人の良さで推理をしている人が笑っていたらおかしいでしょ。その大真面目な中で、ちょっとした言い方や目の動きだったり、自信持っちゃいけないことを自信満々で叫んだりする部分の操作が剛くんは絶妙。それはもうすごいの一言です。もう1つ言うなら僕の感じるおもしろさの感覚が剛くんと合っていて、感覚が共有できるのも非常に助かっています。何も言わなくても僕の望むトーンで演じてくれるし、ともすれば想像以上のおもしろさも与えてくれる。それはおもしろいと感じることが共通していないと成立しないことなので、すごくやりやすいです。

Q 現場で福田さんから指示を出すことはないんですか?
それはありますが、僕から「こうして」と言うこともあれば、剛くんから「こうした方が」という提案もある。監督と役者の話というより、僕と剛くんの普段の会話みたいなものです。僕のイメージを無理やり当て込んでもいなければ、剛くんが好き勝手に演じているわけでもない。六郎は絶妙なバランスで成り立っているキャラクターです。

Q 水川あさみさん演じるリカコもかなりぶっ飛んだキャラクターですが(笑)、これは監督の指示ですか?
僕もリカコのキャラクターに…というか水川さん自身にビックリした1人です(笑)。リカコに関しては水川あさみという女優の演技に完全に引っ張られて変わっていったキャラクターです。

Q どのように変化したのでしょうか?
最初はもっと普通のツッコミをする人だったと思います。でも水川さんがどんどんおもしろい演技を披露してくれたので5話あたりからこんなこともやらせてみようかとリカコのツッコミの幅を広げることができました。高くしたハードルをも難なく乗り越えて、リカコをすごいキャラクターにしてくれた水川さんには感謝しています(笑)。

Q 前シリーズのクランクアップでは、水川さんは「リカコを演じたことで、恥じるということを忘れました」とコメントしています。
それは僕が望んだことではなく、自ら突き進んだ結果だと思います(笑)。期待に応えるというレベルではない、それ以上の女優魂を見せてもらいました。

Q 六郎、リカコ、大田原警部、茂木刑事の関係は素敵ですね。
現場でのいい関係がそのまま反映されていますね。剛くんや水川さんもそうですが、高橋克実さんがまたいいんですよ。そんな事を真面目に言われても…みたいな、シリアスでストイックに演じることのおもしろさを教えてくれたのは克実さんですから。それは戸次さんも同じ。あの2人も六郎と一緒で絶対に笑わないですから。本当にすごい方たちです。

Q 素朴な疑問なんですが、茂木刑事はなんでいつも走ってるのでしょうか?
あれは昔やっていた刑事ドラマへのオマージュです(笑)。僕が見ていた昔の刑事ドラマの若手刑事は必ずといっていいほど走らされていましたから。若い刑事は走るものなんです(笑)!それを膨らませていくうちに人力車を引っ張ったり、橋があるのに川を走ったりということになってました。茂木刑事ってなんかいいキャラクターですよね。あの六郎についていく大田原がいて、その大田原についていってるのが茂木。方程式で言えば一番バカなキャラクターなんですが、なんか健気で好きですね(笑)。

Q 最近、悲しかったことを教えてください。
…………。悲しかったことですか………これもないなぁ。あえてあげるなら、楽しかったことがロケ弁当の話しか思いつかなかったことくらいです(笑)。楽しいことも悲しいことも、これからあると思います。

Q 今回、タイトルに「帰ってこさせられた」が付いていますが…。
実際に復活があまりにも早くて、帰ってこさせられた感があるのは事実です(笑)。復活が決まってから、僕と剛くんで "帰ってこさせられた感"を出したコメントをしていこうとも話していました。ただ前シリーズが終わった時にもっとやりたいことや、やり残したことがたくさんあって、ぜひまたやりたいとは思っていたんです。今回、4回というちょうどいいサイズで復活できたことは非常に嬉しかったですね。ましてや「33分探偵」は企画性の強い作品。それが"ドラマとドラマの間の4回だけ埋める"といった穴埋めという企画性を持って戻ってこられたのは何より。最高の形での復活だったと思います。

Q 今後もずっと続いていく可能性も…。
やるならば、普通の連ドラではなくやっぱり穴埋め的にやっていきたいです。あくまでもこのスタンスは貫きたい。むちゃな振られ方をしたいですね(笑)。

Q 今回のシリーズでは、沢村一樹さん演じる氏家警部という新しいキャラクターも登場しました。
今回、関西編があり新しい警部が登場することになったので、ぜひ沢村さんにとお願いしましまた。実は「帰ってこさせられた~」が始まる前の仕事で沢村さんとご一緒させてもらっていて、その時は声優としてだったんですが役作りが素晴らしかった。もう一目ぼれです(笑)。その時に沢村さんが演じてくれた"どっち付かずの課長"という役が、氏家警部のベースにもなっています。

Q 沢村さんは氏家のキャラクターがつかみきれず、探り探り演じていると話していました(笑)。
氏家警部のポジションは本当に難しかったと思います。僕自身、氏家のキャラクターはずいぶん考えましたから。六郎の間違った推理に乗っかってくれないと話が止まってしまうから困るけど、普通に乗っかるだけでは大田原とキャラクターがかぶってしまう。どうしようかと考えた結果、"とりあえず六郎の推理には乗っかるけど、反論されるとそっちにも乗っかる人"にしようと思ったんです。大田原が六郎の推理を信じるのには信頼があるけど、氏家の場合は誰にでも乗っかるから警部としては最低な人(笑)。それをうまく演じてくださいました。どっち付かずな感じは実際に演じてもらわないとどうなるかわからないので最初は理論派という設定も付けてましたが、最初の撮影で沢村さんがあまりにもうまかったので"どっちつかず感"全面押しで脚本を書き変えました。脚本と演出を両方やっていた特権です。

Q 出演者のインタビューで必ず出てくるのが「笑いを堪えるのが大変」でした。それと同時に「撮影中、一番笑っているのは監督」という話も出てきます。しかも、その笑い声でNGが出たこともあるとか。
笑っているのは認めますが、そんなに笑っているつもりはないんですよね…。しかも僕がいるベースは現場から離れているので、まさか笑い声が響いてNGになるなんて想像もしないじゃないですか。それは剛くんや水川さんに散々怒られました(笑)。実際、こんなふざけたセリフを大真面目に言わなくちゃいけない役者さんは大変だと思います。言い訳するわけじゃないけれど、見てる僕からすれば、みんな言ってることがめちゃくちゃなのにすごくかっこよく決めてるんですよ。そりゃ、笑っちゃいますよ(笑)。

Q 現在、編集作業中ですが編集中もやはり笑っているんでしょうか?
まぁ、よく笑ってますね(笑)。ただ、脚本を書く時、監督の時、編集する時の自分ってそれぞれ違くて、別人格な気がします。だから自分で書いて撮ってきた思い入れの強い映像でもドライにカットできる。だいたい1話につき5~6分程度オーバーしていて、33分の作品の5~6分といったら相当なカット数になるわけです。監督している時のテンションではとても出来ません。

Q 「帰ってこさせられた~」の撮影で印象に残っているのはどんなことですか?
体調を崩してしまったことですね。急性の胃腸炎だったらしくてひどい腹痛で家に帰ってからもとにかく苦しくて眠れないまま翌日を迎えたんです。今回は監督が1人しかいないから撮影を休むわけにもいかず、かなりしんどい状態で現場に行ったんですが、それを悟られたくなくて現場ではあえて気丈に振舞っていたんですね。その時に、モニターを見ていた僕の背中をマッサージしてくれた人がいて。かなり弱ってた時だったので本当に気持ちよくて、身を任せるようにしてたら本当に丁寧に丁寧にマッサージを続けてくれていたんです。撮影再開の合図があって「ありがとう」って振り向いたら、メイクさんだと思っていたその人が実は剛くんだったんです。その後も休憩の度に来てはマッサージをしてくれた。僕は調子が悪いとは一切言ってないし、現場でも気付いていない人がほとんど。そんな中で剛くんは「健康は気をつけなあかんで」と一言だけ言ってマッサージしてくれました。きっと剛くんにはバレてたんだと思います。その優しさに泣きそうになりました。

Q 撮影を終えられて、自分はいい監督だったと思いますか?
いい監督かどうか自分で判断するのは難しいですね。ただ言えるのは、基本的に僕は現場で監督らしいことは何一つしてません。普通、監督は役者さんに芝居をつけたり映像のカット割りなどをするものですが、カット割りはチーフカメラマンがやってましたから。最初のリハーサルで動きや芝居が決まると、スタッフが集まってカット割りでカメラ位置なんかを決めていくんですが、僕はその間は剛くんと水川さんと遊んでました。その後、本番を見て「OK」というのが僕の仕事でしたね。水川さんにも「あれ?監督はあっち(スタッフ側)にいるものじゃないの?」と突っ込まれたことがあります(笑)。でも、役者さんがそういう監督を見て「監督がこんなにふざげてても大丈夫なんだ」という安心感を与えることができたなら、こんないいことはない。現場がピリピリしているより楽しくて明るくて笑っていられる方が絶対にいい。それは映像にも反映されますから。そういう意味では先頭をきって楽しんでいた僕は悪い監督ではなかったと思います(笑)。

Q 福田さんから見て、六郎はいい探偵だと思いますか?
なかなか難しい質問ですね(笑)。でもテレビ局からすれば、放送尺も持たせてくれるし、ドラマとドラマの穴埋めもしてくれる最高の探偵だと思います(笑)。あとは、すごい切れ者だなとは思います。舞台に落ちてるゴムひも1本から、あんな壮大な推理を組み立てられるすごい想像力の持ち主。作家としては尊敬すべき点はありますね(笑)。

Q もし自分に困ったことが起こったら六郎に依頼しますか?
本当に困ってたらしません。そんな極限状態ではなく気持ち的に余裕がある時なら六郎に依頼してもいいかなと思いますが、本当に困ってたらそりゃイヤですよ(笑)。これまで出演者の方もみんな依頼しないと言ってるみたいですが、僕が1番嫌ですよ(笑)。間違ってもしません。

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